今回はオプションを取引するうえで重要な「グリーク」についての解説です!
グリークとは、オプションを取引する上でのリスク指標のことを意味し、値動きの変動に対する、プレミアム (オプションの価値) の変化を数値で表したものです!
グリークには、デルタ、ガンマ、セータ、ベガの4つが存在します!
この記事を読むことで、よく分からないグリークについての理解を深める事ができます!
それでは見ていきましょう٩( ᐛ )و
目次
オプションとは何か?
まず初めにオプションとは何か?見ていきます。
オプションとは「一定の期間内に、特定の原資産を決められた価格で売買できる権利」のことを言います。
具体例を上げると、現在23,000円の日経平均を、1ヵ月後に22,000円で買う権利を手に入れることができます。この際、23,000円の日経平均を22,000円で買うために支払う料金をプレミアムと呼びます。
オプションには、買う権利を指す「コール」と、売る権利を指す「プット」があります。
コールオプションを買う人は、プレミアムを支払い、売る人はプレミアムを得ることができます。
少しややこしくなりますが、このコールを売ったり (買う権利を売る)、プットを売ったり (売る権利を売る) することができます。
オプションにおける損益を見てみます。
これはすごく大切なことになりますが、オプション購入者は権利を放棄することができる一方、オプションを売った人は権利を放棄することができません。
つまり、23,000円の日経平均に対して、22,000円で買う権利を購入している人は(コールオプションを購入)、日経平均が20,000円に下落しても、22,000円で買う権利を放棄すればよいので、損失は最初に支払ったプレミアムだけに限定されます。
対するオプションを売っている人は、最初にプレミアムが手に入りますが、権利を必ず行使しなければいけないので、損失は無限大となります。
オプションの理論価格とは?
このプレミアムは、オプションの理論価格と呼ばれており、市場参加者の多くは、ブラックショールズモデルを用いて計算しています。
また、オプションには、いつでも権利行使(決済)できる「アメリカンタイプ」と、満期まで権利行使できない「ヨーロピアンタイプ」があります。
オプションの理論価格は、以下の6つにより求めることができます。
- 行使価格(いくらで買うor売る権利を手に入れるか)
- 原資産価格(例:日経平均)
- 満期までの時間
- ボラティリティ(値動きの大きさ)
- 配当
- 金利
オプションの価格は、標準偏差(正規分布)に基づいて計算されており、σ[シグマ]を利用することで、市場が想定しているボラティリティを知ることができます。
σ1 = 68%
σ2 = 95%
σ3 = 99.7%
オプションを取引するメリットは?
オプションをトレードするメリットは以下のようなものがあります
- 損失の限定化(権利を放棄することができる)
- 投資戦略の多様化(レンジ相場でも利ザヤを稼ぎやすい)
- ボラティリティをトレードできる
- プレミアムの獲得(オプションを売るとプレミアムが貰える)
- 高レバレッジ(株を直接売買しないため資金効率が良い)
- 保有資産に対する保険(プットを買う事で下落に備えることができる)
このオプションを取引していくうえで大切なのが「グリーク」なのです!
次章から、グリークを構成する「デルタ」「ガンマ」「セータ」「ベガ」についてみていきましょう!
オプションのデルタ【δ】とは?
デルタとは、原資産が1ポイント上昇したときに、オプションの価格がどれほど上昇するのかを表わした数値です。つまり、デルタは保有しているオプションが、どれほど株(原資産)に近いかを表わしている指数と言えます。
例を上げて説明すると、株価100ドルの株格が1ドル動いたとき、デルタが0.5のオプション価格は、0.5ドル動くという意味になります。デルタが0.3の場合、0.3ドル動きます。そして、コールにおけるデルタは0~1の数値になり、プットにおけるデルタは0~-1の数値になります。
このデルタは、オプションがインザマネーで満期を迎える確率を示しています。ディープインザマネーのオプションは(例:株価が100ドルの時に50ドルで買う権利)、ほぼ確実にインザマネーで満期を迎えるので、1に近いデルタを持ちます(デルタ1=原資産と同じ動きをする)
アットザマネー(例:株価が100ドルの時に100ドルで買う権)におけるデルタは、インザマネーになるか、アウトザマネーになるか、確率は五分五分と言うことができるので、デルタは0.5になります。
このように、デルタはオプションがインザマネーで満期を迎えることができる確率を表わしていると言うことができ、コールのデルタが0.4の場合、40%の確率でインザマネーになるだろうと予測されていると言うことになります。
オプションの執行価値がある状態
株価が100ドルの時、90ドルで買える権利(コールのロング)を保有している状態
オプションの執行価値が無い状態
株価が100ドルの時、110ドルで買える権利(コールのロング)を保有している状態
オプションの執行価格と、株価が同じ状態
株価が100ドルの時、100ドルで買える権利(コールのロング)を保有している状態
このデルタがもっとも重要になる場面が、ヘッジをかける場合です!(価格変動リスクを無くす)
オプションのガンマ【γ】とは?
ガンマとは、原資産が1ポイント上昇したときに、デルタがどれほど上昇するのかを表わした数値です。よりシンプルにゆうと、プレミアムの増加率を表わしています。
つまり、デルタが0.5のオプションの原資産が1ポイント動いた場合に、デルタが0.5からどれぐらい変化するのか表わした数値です。
オプションを買う最大の理由は、このガンマをロングすることにあるといっても過言ではありません!
その理由は、オプションを買ってデルタをヘッジした場合、株価が上がっても下がっても利益を上げることができるからです!
本当に上がっても下がっても利益を出せるのか、実際に日経平均のグリークを用いて計算してみましょう!※少しわかりずらくなるため、興味の無い方は読み飛ばして下さい
デルタ
株価(原資産)が1ポイント変化したときに、オプションのプレミアムがどのぐらい変化するのか表わした数値
株価(原資産)がい1ポイント変化したときに、デルタがどのぐらい変化するのか表わした数値
日経平均先物(原資産価格:22,883)
このデルタをヘッジするには、100枚×0.4831=48.31枚となり、48.31枚分の日経平均を空売りすることで、オプションの価格変動リスクを回避することができます。
今回は、日経平均が22,883円から±約2,000円変動した場合を想定して計算します。
オプションの損益計算は、基本的にプレミアムの増減×枚数となります。少しややこしいですが、意味を理解すれば、だれでも簡単に計算することができます!
◉日経平均が22,883円から21,000円(マイナス1,883)になった場合の損益
・オプション損益
0.4831(デルタ)-0.000148(ガンマ)×1883(Pips)=0.2044(日経平均が21,000になった時の23,000コールのデルタ)
【0.2044+0.4831】÷2=0.3438(23,000→21,000のデルタ平均)
945(プレミアム)-1883(Pips)×0.3438(デルタ)=297.63(日経平均が21,000になった時の23,000コールのプレミアム)
(297.63ー945)×100=-64,737円の損益(プレミアの差額×枚数)
・空売り損益
-48.31枚×1,883円=90,968の利益
・結果
90,968-64,737=26,231円の利益
◉日経平均が22,883円から25,000円(プラス2,117)になった場合の損益
・オプション損益
0.4831(デルタ)+0.000148(ガンマ)×2,117(Pips)=0.7964(日経平均が25,000になった時の23,000コールのデルタ)
【0.7964+0.4831】÷2=0.6398(23,000→25,000のデルタ平均)
945(プレミアム)+2,117(Pips)×0.6398(デルタ)=2,299.46(日経平均が25,000になった時の23,000コールのプレミアム)
(2,299.46-945)×100=135,446円の利益(プレミアの差額×枚数)
・空売り
-48.31枚×2,117=102,272損益
・結果
135,446-102,272=33,174円の利益
以上、ややこしい計算でした…
ここで大切なことは、デルタヘッジをするだけで、株価の上下関係なく利益を出すことができると言う所です。こちらも参考にしてみて下さい(デルタヘッジ具体例)
つまり、デルタヘッジするだけで、誰でも簡単にお金を稼ぐことができ、、、、ません!
なぜかというと、もし価格が動かずに満期を迎えてしまうと、プレミアムの価値が下がり、その分損をしてしまうからです。
また、オプションのプレミアム(価値)は、満期が近づくにつれて減少していきます。(時間的価値の減少)
要するに、デルタヘッジをしている人は、市場が織り込んでいる以上のボラティリティ(σ1以上)が無ければ、利益を出すことができないのです。
そして、この時間価値の低下を表わした指標こそが「セータ」です!
オプションのセータ【Θ】とは?
セータとは、オプションの価値の、1日辺りの価値減少分を表わした数値です。
言い換えると、1日辺りの時間的価値に支払うプレミアムとも言うことができます。
この時間的価値は、長いほうが高くなります。例えば、日経平均が1年後に1,000円上昇する確率と、来週に1,000円上昇する確率を比べると、期間が長いほうが上昇する確率が高いといえます。
つまり、時間が経過するとともに、オプションの価値(プレミアム)は減少していき、この失われていく価値こそがセータだと言うことです!
先ほど計算に使用した、日経平均株価のインプライドボラティリティ(IV)は、22.1%となっています。これは市場参加者が、1年間の内で、日経平均が22.1%変動するだろうと予測している事を意味します。
これを1日の値幅に直すには√250=16で割ります。(1年間の営業日数)
すると22.1÷16=1.38%となり、1日の値動きはσ1(68%)の確率で1.38%動くことが期待されているわけです。
そして、この1.38%の値動きに対する期待が、プレミアムに含まれているのです。
まとめると、このσ1に収まるか収まらないかで、オプションの利益は左右され、σ1に収まれば、デルタヘッジ組はセータの分だけ損をし、σ1に収まらなければデルタヘッジ組の利益になると言うことです。
オプションのベガ【V】とは?
ベガとは、インプライドボラティリティ(IV)が1ポイント上昇したときに、オプションの価値がどれぐらい上昇するのか表わした数値です。
ヘッドラインニュースなどによって、市場のIVが増加したときに、ベガを使うことで、オプションの価値が、どれほど上昇するのかを計算することができます。
ベガが「100」ということは、インプライドボラティリティ(IV)が1%上がると、オプションのプレミアムも100ポイント上昇することになり、IVが1%下がると、プレミアムも100ポイント減少します。
また、オプションの価値はボラティリティが高ければ高いほど増加するので、IVに対して正の相関を持ちます。
ベガは、満期までの日数が長ければ長いほど大きくなり、このことから、満期までの日数が長いオプションの方が、短いオプションよりもボラティリティの影響を受けると言うことが読み取れます。
最後に…
以上がグリークの解説となります!
オプションは複雑で理解が困難ですが、ぼんやりとはイメージを掴むことはできたのではないでしょうか?
オプションの理論価格は、あくまで正規分布に基づいて計算されており、すべてのリスクを計算することは不可能です。
実際にリーマンショック時、SP500は一日で9.03%下落しました。これを1990年~2016年までの日次リターンに当てはめて考えてみると、σ7以上となります。これを確率に直すと10億7000万年に1度の確率となり、地球の歴史上で4度しか起こらない計算となりますw
相場に絶対は絶対にないと言うことです!
END